要点まとめ
- アンカリング: クライアントが最初に見る価格が、その後すべての基準点になる。だから最上位プランから見せるべき
- おとり効果: 戦略的に設定した3つ目の選択肢が、本当に買ってほしいプランにクライアントを誘導する(スタバのGrandeと同じ仕組み)
- 価格品質効果: 高い料金を払うクライアントほどコミットし、結果も良い。同じ商品でも支払った価格によって成果が変わるという研究がある
- これらはトリックじゃない。人間の意思決定の仕組みそのもの。使うことで、自分の価値をより明確にプレゼンできるようになる
- これらの原則の1つでも適用すれば、coaching 自体を変えなくてもクライアント単価を15〜25%上げられる可能性がある
目次
価格は「ただの数字」じゃない
ほとんどのパーソナルトレーナーは2つのうちどちらかで料金を決めている。周りが何を請求しているか、または「公正」だと感じる金額。どちらも機会損失を生む。
ここが重要なポイントだ。クライアントはあなたの料金を真空中で評価しない。以前見た数字との比較、あなたが提示する選択肢との比較、価格がサービスの質について何を語っているかとの比較で評価する。
価格心理学は操作じゃない。人間が自然にどう意思決定するかを理解し、正しい選択が同時に明白な選択になるようにオファーを構成すること。
これら3つの原則は、数十年の行動経済学リサーチに裏打ちされている。そしてcoachingパッケージの見せ方にそのまま当てはまる。
原則1:アンカリング
原則: 人が最初に見る数字が、その後に続くすべての数字の心理的基準点になる。(Tversky and Kahneman, 1974)
行動科学で最もよく実証された効果のひとつだ。ディーラーに行って最初に見る価格が1,000万円なら、650万円が妥当に感じる。最初の数字が400万円だったら、同じ650万円が高く感じる。商品は変わっていない。アンカーが変わっただけだ。
トレーナーにとっての使い方
見込みクライアントが料金を聞いてきたとき、パッケージを提示する順番がほとんどのコーチが思っている以上に重要だ。
間違った順番: 「ベーシックプランは月額15,000円です。25,000円のオプションもあって、プレミアムは40,000円です。」
クライアントの脳は15,000円にアンカリングされる。それより上は全部アップセルに感じる。ほとんどの人が最安プランで決まる。
正しい順番: 「プレミアムcoaching体験は月額40,000円。カスタムプログラミング、栄養coaching、毎週のビデオコール、毎日のメッセージング、全部含んでいます。多くのクライアントはProプラン、月額25,000円を選んでいます。トレーニング、栄養、毎週のcheck inが含まれます。トレーニングプログラムだけから始めたいなら、Starterが15,000円です。」
こうすると40,000円がアンカーになる。25,000円は賢い真ん中の選択に感じる。15,000円は予算オプションに感じる。ほとんどの人が真ん中を選ぶ。まさに狙い通りだ。
トレーナーの実例: Sarahはオンラインfitness coachで、以前は月額17,500円のパッケージから提示していた。問い合わせの60%をクローズしていて、ほぼ全員が17,500円。プレゼンを月額45,000円のEliteプランから始めるよう変更した。クローズ率は変わらなかったが、クライアント平均単価が17,500円から26,500円に跳ね上がった。coachingは変えていない。アンカーを変えただけだ。
原則2:おとり効果
原則: 2つの選択肢から選ぶとき、そのうち1つに対して明らかに劣る3つ目の「おとり」選択肢を追加すると、その選択肢が大幅に良く見えるようになる。(Huber, Payne, and Puto, 1982)
最も有名な例はスターバックスのサイズ設定だ。
スターバックスの戦略
スタバに入る。Tall(小)が490円。Grande(中)が550円。Venti(大)が600円。
Tallがおとり。たった60円足すだけでGrandeが手に入る。ずっとお得に感じる。さらに50円でVentiも「ちょっと贅沢だけど無理じゃない」に感じる。価格設計は、最もマージンの高いGrandeが明白な選択に見えるようになっている。
スタバでml当たりの計算をする人なんていない。ただ真ん中が賢い選択だと「感じる」だけ。これがおとり効果だ。
トレーナーにとっての使い方
自分が推したいプラン(最もマージンが良く、クライアントの成果も最も良いもの)が、選択肢の中で明らかにベストバリューになるようにパッケージを構成しよう。
パッケージ構成の例:
| パッケージ | 料金 | 内容 |
|---|---|---|
| Starter | 月額15,000円 | トレーニングプログラム、月1回のcheck in |
| Pro(一番人気) | 月額25,000円 | トレーニング + 栄養 + 毎週のcheck in + メッセージング |
| Elite | 月額40,000円 | Proのすべて + 毎日のメッセージング + 隔週のビデオコール |
StarterとProの差を見てほしい。10,000円プラスで、栄養coaching、月1回から毎週のcheck in、メッセージングアクセスが付く。価値の跳ね上がりが大きい。
ProとEliteの差を見てほしい。15,000円プラスで毎日のメッセージングとビデオコール。いいけど、同じレベルの価値ジャンプじゃない。
Starterは部分的に、Proを信じられないほどお得に見せるために存在している。そして効果がある。ほとんどのクライアントがProに落ち着く。利益率とクライアント成果の両方でスイートスポットだ。
トレーナーの実例: Marcusは2つのパッケージを提供していた。月額20,000円(トレーニングのみ)と月額35,000円(トレーニング + 栄養 + コール)。クライアントは50/50に分かれていた。月額15,000円のStarter(プログラムのみ、月1check in)を追加した。20,000円プランが即座に最悪の選択に見えるようになった。明らかに良い2つのオプションに挟まれて。2ヶ月以内に、新規クライアントの65%が35,000円パッケージを選ぶようになった。クライアント平均単価が30%アップした。
原則3:価格品質効果
原則: 人は価格を品質のシグナルとして使う。高く払うほど、より多くを期待し、より努力し、同じ商品やサービスでもより良い結果を得ることが多い。(Shiv, Carmon, and Ariely, 2005)
エナジードリンクの実験
研究者が2つのグループに全く同じエナジードリンクを渡した。同一ブランド、同一配合、同一容量。一方のグループには定価を払ったと伝え、もう一方には割引価格だと伝えた。
その後、両グループにパズルを解いてもらった。
定価グループの方が割引グループより大幅に多くのパズルを解いた。同じドリンク。同じ人。唯一の違いは、いくら払ったと信じているか。高い価格がより高い期待を生み、それがより大きな努力を駆動し、より良い結果を生んだ。
トレーナーにとっての使い方
このリストで最も重要な原則だ。クライアントの成果に直接影響する。
クライアントが月額10,000円でcoachingを受けるとき、ジムの会員権のように扱う。忙しくなったらスキップしていいもの。月額30,000円なら、全然違う姿勢で臨む。プログラムに従う。食事を記録する。check inをキャンセルしない。価格がコミットメントのレベルを変えた。
理論じゃない。バジェット帯とプレミアム帯の両方のクライアントを持つコーチに聞いてみればいい。プレミアムクライアントの方が良い結果を出す。coachingが違うからじゃない。投資額が行動を変えたからだ。
つまり、安すぎる料金設定は寛大さじゃない。実際にクライアントの成果を損ねている。
トレーナーの実例: Elenaは月額12,000円でオンラインcoachingを提供していた。クライアントは悪くなかったが、エンゲージメントにムラがあった。約40%がcheck inを定期的にスキップ。料金を月額27,500円に引き上げ、栄養coachingとGymkeeを通じたプロフェッショナルなアプリ体験を追加し、オファーをプレミアムtransformationプログラムとして再ポジショニングした。check in完了率が85%に跳ね上がった。クライアントリテンションは倍増。同じコーチ。違う価格シグナル。
料金引き上げの全戦略(メッセージテンプレートと損益分岐点の計算を含む)はクライアントを失わずにパーソナルトレーニングの料金を上げる方法を参照。
全部まとめると
3つの原則を全部一度に使う必要はない。でも1つ適用するだけで、クライアントがオファーをどう捉えるかが変わる。
クイックチェックリスト:
- 最上位プランから提示しているか?(アンカリング)
- 最低3つの料金プランがあり、ターゲットプランを際立たせるデザインになっているか?(おとり効果)
- クライアントがcoachingを真剣に受け止めるのに十分な料金設定になっているか?(価格品質効果)
どれかの答えが「いいえ」なら、簡単に改善できるポイントが待っている。
そして忘れないでほしいのは、coaching自体が結果を出さなければどれも意味がないということ。価格心理学はクライアントを適切なレベルで迎え入れる。coaching体験が維持する。
FAQ
価格心理学って操作的じゃない?
いいえ。これらの原則は人間の脳が自然に選択肢を処理する方法を説明しているだけ。誰も騙していない。クライアントが自信を持って決断できるようにオファーを提示している。操作とは、コストを隠したり価値を偽ること。パッケージを明確に構成するのは、ただの良いビジネスだ。
coachingパッケージが1つしかない場合は?
クライアントにとってYesと言うのが難しくなっている。単一価格は「やるかやらないか」の決断を迫る。3つのプランにすると「どれにする?」に変わる。リサーチでは28%コンバージョンが高くなる。ほとんどのクライアントが真ん中に落ち着くとしても、他の選択肢の存在が「良い選択をした」と感じさせる。
価格品質効果があるなら、できるだけ高くすればいい?
いいえ。価格が知覚価値を超えるポイントがあって、そこから先はコンバートするんじゃなく見込み客を逃す。スイートスポットは、品質をシグナルしコミットメントを引き出すのに十分高く、かつ提供する内容と体験で正当化できる料金。料金を上げるなら、coaching体験が見合っていることを確認しよう。
自分の料金が安すぎるかどうか、どう判断する?
3つのシグナル:ほとんどのクライアントが即座にYesと言う(プッシュバックがゼロ)、check in完了率が60%以下、稼いでいる金額に対して希望以上に多くの時間を働いている。3つ全部当てはまるなら、料金はほぼ確実に安すぎる。
これらの原則は対面トレーニングにも使える?
もちろん。アンカリングはどんなセールスの場面でも機能する。対面、電話、料金ページ。おとり効果はセッションパッケージの構成に当てはまる(単発 vs 10回パック vs 月額定額)。価格品質効果はトレーニング形式に関係なく、すべてのクライアントに当てはまる。
出典
- Tversky, A., & Kahneman, D. (1974), "Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases." Science, 185(4157), 1124-1131. アンカリングの原典リサーチ。
- Huber, J., Payne, J. W., & Puto, C. (1982), "Adding Asymmetrically Dominated Alternatives: Violations of Regularity and the Similarity Hypothesis." Journal of Consumer Research, 9(1), 90-98. おとり効果。
- Shiv, B., Carmon, Z., & Ariely, D. (2005), "Placebo Effects of Marketing Actions: Consumers May Get What They Pay For." Journal of Marketing Research, 42(4), 383-393. 価格品質効果とエナジードリンク実験。
- Ariely, D. (2008), Predictably Irrational: The Hidden Forces That Shape Our Decisions. HarperCollins. 消費者の価格行動。
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